2030年ごろには、エアラインのパイロットもヘリコプターのパイロットも不足する予測がされていて、これには、これまでの養成方法などに理由があります。
日本のエアラインのパイロットの養成は、航空大学校と航空会社の自社養成システムを中心とした養成と採用が行われてきました。
航空大学校の年間の養成人数は、一定数を毎年輩出していますが、昨今の航空需要に応じたパイロットを満たすものではなく、航空会社の自社養成も会社の経営状況に左右される採用人数が問題です。
ヘリコプターのパイロットも、以前は航空大学校での養成が行われていましたが、現在では、行われておらず、自費訓練生が大半を占めます。
現実的には、パイロットの年齢構成に歪みを生じており、これが近い将来のパイロットの不足懸念につながっており、さまざまな対策が考えられていますが、解消されてはいません。
パイロットの養成機関は?
パイロットの養成機関は、日本の場合、格安航空会社の参入で、規制緩和が起き、自費訓練の免許取得者にもエアラインのパイロットの門戸が開かれてきましたが、航空大学校がメインであることは変わっていません。
今までの日本において、パイロットになるには、航空大学校への入校か、航空会社の自社養成パイロットへの応募しか、養成訓練を受ける方法がありませんでした。
エアラインのパイロットの養成訓練は、レシプロエンジンの小型飛行機の事業用ライセンスを保有していたとしても、ジェット機への移行訓練、しかも大型の旅客機の型式限定の訓練が必要となり、高額な訓練費用と設備を必要とします。
事業用ライセンスを取得する民間のパイロット養成機関を経由したフルライセンサーと呼ばれるパイロットであっても、エアラインの飛行業務に通用する技量に育てる費用を、航空会社が負担してきました。
このことが、現在と近い将来のパイロットの不足の理由につながり、対策を講じることの難しさにもなっています。
パイロットの不足の原因は?
パイロットの不足の原因は、養成機関の一元化ともいう訓練システムに一因があります。
航空大学校と航空会社の自社養成システムには、質の高いパイロットの育成ができる理由のため実施されますが、人数を確保することには問題があります。
特定の養成機関のみでの育成には、輩出できるパイロットの人数には限度があり、航空需要の高まりには、必要な人数を供給することができなくなっています。
しかも、航空会社の自社養成でのパイロットの育成は、会社業績に採用数が左右され、経営状態の上下により、毎年の採用人数も上下しています。
このことが、現在のパイロットの年齢構成に偏りが出ている理由であり、この年齢構成の不足のパイロット数を補うことが、今後の対策につながります。
そのために、養成機関として、私立大学にパイロット養成コースを設置し、国も奨学金制度を設定したりといった対策を講じています。
しかしながら、パイロットの訓練に必要な高額な訓練費、長期にわたる訓練期間の問題の根本的な対策にはなっていないのが実情です。
パイロットの不足の対策は?
パイロットの採用は、航空会社の経営状態を反映した人数が選択され、パイロットの年齢構成に歪みが生じており、中長期的な需要予測と乖離し、不足懸念が顕在化しています。
このパイロットの不足懸念の払拭のために、養成機関の拡大をはかるために、私立大学にパイロット養成コースの設置や、民間の操縦士養成助成の実施や採用枠の拡大など、さまざまな検討と対策が施されています。
パイロットの養成には、莫大な費用と時間の負担が必要で、簡単に解決できるものではありませんが、不足の理由に対する対策を、各方面が協力して解決しようとしています。